【リポート】「親が今日からできること」~子どもの人生を託すために~

img_5646「保護者の方のサロン」と名付けたこの企画は、障害児・者の保護者の方々がより社会とつながるために、外出や福祉サービスをテーマにしたおしゃべり会や特色ある試みをしている作業所やギャラリーの見学をしてきました。居住区や使っている施設が異なると知らない場所が意外とあるもの。
少人数で互いの想いや夢を語り、新しい人や場所との出会いにより、障害のある子どもとの生活をより楽しんでいただきたいと年5回ほど開催しています。開催はお茶やランチをしながらのサロン形式で行っています。

11月は「親が今日からできること」と名付けて、「成年後見制度」や「あんしんノート」など子どもの将来への準備について2回にわたってサロンを開催しました。
講師はご自身も重症心身障害者の保護者である斎藤聡子さん。斎藤さんは特定非営利活動法人 よこはま成年後見つばさに所属され、特別支援学校PTAや地域の施設の研修で「あんしんノート」の普及や「成年後見制度」の講師を務められています。

2回にわたって開催したサロンの場所は、カフェの一角をお借りして子どもたちを学校や施設に送り出した午前中、お好みの飲み物を手にスタート。1回目は成年後見制度で障害のある子どもの生活を託した方のドキュメンタリーDVDを視聴しました。闘病中でありながらも、これからのわが子のために人権を尊重した生活を周囲に託して亡くなった母の姿に自らを重ね、終った後もしばらく言葉がありませんでした。
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その後、「ひと」「お金」「もの」「その他」とカテゴリー分けした紙に、それぞれが子どもの未来に必要なものを書き出していくワークショップに入ると、年齢や障害の違いにより様々なワードが飛び交います。在学中で発達障害・知的障害のあるお子さんの保護者からは「信頼できる人」「友達」/「自分で稼いで管理もしてほしい」/「親亡き後に一緒に生きてくれる人(結婚相手)/「社会とつながれる場所」など自立に向けて本人を支えになるキーワードが出てきました。

参加者からも「改めて書くことで願いが見えてきた」との意見も。
身体障害・重心の社会人の保護者となると、「子どもの思いをくみ取ってくれる人」/「地域で気にかけてくれる人」/「お金の管理は誰に託そうか?」/「細かいことを支援する人に伝えておく」といった、安心できる環境を求める傾向になり、親の手から離れることへの不安が見え隠れしています。特にお金のことは、親族に託すのか、法的な機関に託すのかの迷いもあるようでした。

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講師からは、「親として本人の必要な生活を守りながら、一人の人として認めること」を核として、子どものライフステージに合わせて支援者や福祉サービスを少しづつ増やしていけば、本人の生活にも広がりが出て、周囲に親の想いも託することができると助言がありました。生活全般については口頭では伝わりづらいこともあるので、「あんしんノート」などに子どもにかかわる細かな記載事項を記録することも併せて、「今日からできること」として取り組んでみましょうと1回目のサロンは締めくくられました。

第2回は2週間後に同じカフェで開催しました。2回参加の方はもう顔なじみになり、学校や子どもの生活の場所のことで、情報交換する様子も。2回目だけの参加の方は社会人、視覚障害のあるお子さんの保護者と地域で相談支援事業をしている支援者。同様のテーマを取り扱っていくうえで参考のため見学したいとの参加です。

前回の「こんな未来を過ごしてもらえたら…」の意見を振り返りながら、事例を交え今回は制度の説明を中心に入っていきました。話を進めながら、今は軽度だと思う身体障害のある人や知的発達障害のある人も加齢により身体や健康状態に不安材料が出てくること。親の高齢化やプライドからの福祉的なことへの抵抗も、今後の生活の範囲を狭めていくきっかけになってしまうとの心配があることを指摘され、障害の異なるご家族の様子も気になったようでした。結局、制度の使い分けは目的によるものとして、

成年後見    身上監護(生活全般・通所先の把握など)ただし、一度契約すると簡単にやめられない。
日常生活自立支援事業                日常的なお金の管理、福祉サービス利用援助(財産管理とは異なる)
後見的支援制度 生活の不安を考え、不便の解消や生活の変化に合う事業所探しや相談相手になる。
あんしんノート 当事者に関する記録を残すようにして、将来の引継ぎだけでなく急な災害・支援者の交代の際の情報共有ができる。

以上のような目的に合わせて選択していくよう、説明を受けました。
その後、それぞれの手続きに必要な費用や、同じ制度でも窓口によっては一緒になって取り組んでくれるところがあるなど、参加者でもある支援者から補足も交え、実現に向けた質問も飛び交いました。
最後に講師からは「共有できる情報や、家族の想いなど背景がわかると支援がしやすくなっていきます。まだ、動き始めたばかりの制度だからこそ、使い勝手がよくなるように支援してくれる人と同時に制度も育てることを心がけてください。」との言葉がありました。

img_5687 保護者の方のサロンで取り上げた中では、かなり内容の濃いテーマでしたが必要ではあるけれど、急がずじっくりと我が子の生活に置き換えて考えて自分たちに合った制度を見つけて欲しいと思っています。個人では聞くことのできない専門職との出会いのきっかけづくりこそ、このサロンの役割と考え定期的にこのテーマについて取り上げていくことで制度や事業者の成長も確かめていければと考えています。