身体との対話
肢体が不自由な人にとって、白衣の脱ぎ着やビニール手袋の装着は容易なことではありません。
「でもね、工夫すればできますよ。」
不自由な左手を使い、千田さんは少しずつビニール手袋に右手を入れていきます。
日頃から、どのようなことでもまず自分で取り組み、やってみるのだそうです。
「手があたたかいので、これは向かない作業かもしれません…。」
絞り出しクッキーの生地が柔らかい様子。
作業台に向かう昭二さんの手を触らせてもらうと、とてもあたたかいのです。
冷える下肢にくらべ上半身が熱く、
「普段の作業でも、手にバターを持ったりすると溶けてしまって、ちょっと困ります。」
「甘いものは太るので…。」
体重を増やさないように気をつけ、日頃から身体を鍛えている緒方さんは、リオのパラリンピックを観て、ボッチャという車椅子の競技をはじめました。
ずっと「何か自分も活躍できることがないか」探していたのだそうです。
例年なら大会に参加する季節ですが、今年は感染症拡大の影響で大会は開催されませんでした。
「まだまだ、もっと練習して上手くならないと。いま練習すれば、次の大会ではもっと上手くなれます。」
車椅子のこと
作業に入る前の皆さんは、それぞれに準備があります。
白衣を着込み、手を洗い消毒用の電解水でさらに流し…。
戸口にぶつかることなく場所を移動する車椅子の様子に、思わず、上手ですねぇ…と呟くと、「彼のほうが」と、昭二さんを指す緒方さん。
厨房の手前で実習生の皆さんと施設長の加藤さんが、二人の車椅子にカバーを取り付けていきます。
レバーにはレバー用の、肘掛けには肘掛け用のカバー…etc.
衛生面で必要なことなのだそうですが、車椅子はメーカーや機種により規格が異なります。
「やっとこの形に落ち着きましたけど、大変ですよね。」(施設長・加藤さん)
現場には安全や衛生のために、実に多くの取り組みがあります。
つくること
「ここでつくるパンはおいしい。だから自分でも食べる。」
パンだけではなく、プリンやケークサレなど、お気に入りを目当てに来るお客様が多く、あっという間に売れてしまうごぼうハウスの製品。
山林さんのシンプルな言葉は、あたりまえに聞こえますが本当はとても大変なことです。
川上さんのクッキーの成型は、先生のお手本のような仕上がりです。
丁寧でおおらかな仕事振りに、お菓子づくりへの興味と愛着が伝わります。
「お菓子をつくることは楽しい。つくるのも食べるのもすきです。」
ゆっくり丁寧に。小森さんが指で描く円に沿ってクッキーを絞り出す中島さん。
成型できました。
オーブンで焼いた後はトッピングのデコレーション、たのしみです。
出会い、学ぶ
スタッフをお手伝いする学生の二人は、この日、実習の最終日を迎えました。
ごぼうハウスは「アットホーム」で、
「ここに来ることができて良かったです。充実した時間でした。」
短大2年生、就職についてはまだこれから。
「人の助けになる仕事をしたいです。」