どんとこい・みなみ

地域とのつながり

就労支援を行う施設や作業所は、収益を得るための仕事や作業が主な活動になり、利用者さんに工賃が支払われます。

地域活動ホームどんとこい・みなみの場合、パンづくりに参加するみなさんには工賃が支払われますが、ほかの利用者さんは、ここで“過ごすこと”が一日の主な活動になります。

若林さんはじめスタッフのみなさんは、日中活動事業と生活支援事業を行うなかで、その“過ごすこと”の工夫にも日々取り組んでいます。

喫茶室の前にはテラス席、その向こうには地区センターの広場があります。
「感染症拡大の前までは、おとなりの中村特別支援学校のみなさんと一緒にレクリエーションを定期開催していました。」(「街パン」会場で、野村さん)

「利用者さんにとって、生活のリズムはとても大切です。ここでは、取り組む内容をあまり変えず、レクリエーションの内容を変えて日々に変化を持たせています。」

「パンづくりのみなさんは、あまりレクに参加しませんね。とにかく働き者です。」と若林さん。

パンづくりを希望する利用者さんが多いのでは? とうかがうと、本当にそれぞれで、今のところ少数派だそうです。

「少しずつパンが売れるようになり、その売り上げによって利用者さんにお返しできるのではないかと、工賃について考えはじめました。」

現在は「街パン」のほかに小学校の学童などにも販売し、スタッフと利用者さんが一緒に納品に行き、地域交流を広げています。

「パンの販売を通じて、利用者さんに社会や地域とのかかわりができてきました。
一歩、前へ進むことができた、と思いました。」

これからさらに、地域への販売を広げていきますか? とうかがうと、

「ケアプラザでの販売が増えてきていますし、近い場所なら配達ができます。ほかにもお話しはいろいろいただきますが、広がると今度は人員の問題が出てきますね。」とのこと。

パンづくりのスタッフだけではなく、施設全体がかかわるためです。

午後1時前の「街パン」会場、完売したので撤収作業に入ります。

支援との出会い

「僕は生活支援員なので、パンづくりのほかに送迎や介助の仕事があります。たとえば今日は、朝はお迎え、午前中にパンを焼き、お昼をはさんで午後もパン。そして夕方は送り、というスケジュールです。」


これまでの取材でお会いしたみなさんは、支援員としての仕事から、パンづくりやものづくりにたずさわるケースが多かったのですが、若林さんはまったく反対の流れで支援員として仕事をしています。

「お菓子づくりの学校に通っていた経歴を買われ、声がかかりました。
学校では製菓のほかに、パンの授業がありました。ここで役に立つとは思いませんでした。」

パンづくりからはじまり、生活支援の仕事にたずさわり、今日に至ります。


支援員からはじまったみなさんと若林さんと、同じ仕事をする上でなにか違いはあったでしょうか?

「支援の仕事の内容は多岐に渡るため、現場では明快にスケジュールが分かれています。介助する時間、パンを製造する時間、送迎する時間などですね。衛生面・安全面に対しても、定期的に行う細菌検査をはじめ、しっかりと取り組んでいます。
しかし、業種の違うところから入ったはじめの頃は、こうしたひとつの仕事の中に、パンづくりと介助があることに戸惑う部分がありました。

皆んなには、僕が外で取り組んできたパンづくりがわからなかったと思いますが、同じように僕は、皆んなが取り組んできた支援についてわかりませんでした。お互いを見ながら理解してゆくプロセスを共有できたことは、とても良かったです。」

喫茶にもぜひ遊びにきてください、の言葉に、
今日これからうかがっても良いですか?とたずねると、快くOKをいただきました。

どんとこい・みなみの喫茶店はどんなところでしょうか。

この記事を書いた人

N

日頃、ひとりは建築設計を仕事にしていて、もうひとりはアートワークをしています。ややこしいので、ColabusウェブサイトではまとめてNです。頭文字みたいで推理小説風なところがお気に入り。Nを水平方向に反転するとキリル文字のИ(発音は /i/ )、意味は[そして]。私たちは皆さんとColabusをつなぐ、ささやかな接続詞になれることを願っています。