つるの里

つるの里パン工房

つるの里から車に乗って10分ほど、坂道をのぼると東寺尾の地名になります。
山側に行けば、菊名・大倉山、海側に下りれば鶴見。
第二京浜に架かる響橋をこえると、「つるの里パン工房」と書かれた、軒先の赤いテントが見えます。

赤いテントに鶴のイラストがパン工房の目印です。外に出ているパンケースは「販売しています」のサイン!
そっと開けると、中は空っぽ! 「外にケースが置かれていないと、お客さまが工房の中に声を掛けづらいそうで。」と笑う、パン工房長の武田さん。つまりこのパンケースはディスプレイなのです。
焼き上がったばかりのパンはここで冷ましてから、袋に詰めケースに入れて、お客様をお待ちします。
工房の皆さんは何気なく作業していますが、ひと種類ずつ並ぶところがなんともお洒落です。

こんにちは、と工房に入ると、笑顔の女性三人(パン工房長・武田さん、上村さん、野村さん)と、植松さんが迎えてくださいました。

「今ね、クリスマス用に注文を受けた全粒粉のクリスマスパンをつくっています。」

「じゃぁ、植松さん、続きをやりましょうか。ゆっくりまっすぐ……、そうそう、上手ですね。」

「あ、ほんと。植松さん、上手!」

そうしているうちに、焼きあがったシナモンロールがオーブンから出てきて、

「冷めたらアイシングしますよ。それまであちらに置きます。」

たまらなく良い香りです!

シナモンロールはつくる量が多いのですか、とうかがうと、

「これは定期的に注文してくださる個人の方の分なのです。」とパン工房長の武田さん。

「そう、ご注文は週3回で一度に10個です。」

「つまり一週間に30個ですね」



ひと月に120個ということですか……?

「そうなりますね。」

「わたしたちも、お砂糖と小麦粉の摂りすぎが心配になって。
アイシングの量を減らしましょう! とか、ほかのパンにしませんか? と、
お惣菜パンをお勧めしたりしましたけど……。」

「シナモンロールがいいです、って。」

「そう……。一日に5個召し上がるそうです。」

手前左から、上村さん、パン工房長・武田さん、野村さん、そして奥に植松さん。にぎやかです!
熱烈なファンを持つシナモンロール。アイシング(表面に真っ白な砂糖がけ)のために冷めるまでは、左の棚の上が定位置です。

こんなお話の間も休むことなく、皆さんの手は働き続けています。

そして、たえることなくガラス戸からお客さまの「パンありますか?」の声。

パン工房長の武田さんは、作業の手を止めて大忙しです

つるの里所長・藤井さん(中央)もお客さまのご案内。
パンはもう、少しになってしまって……。
正午を過ぎるころには売り切れ、「ごめんなさい、今日の分は終わってしまいました。」

今度は、「食パンの生地、発酵が終わりましたね。」

焼きましょう、とオーブンに。

発酵後の食パンはもうすでに、とても美味しそう。焼きあがりがたのしみです!
食パンも朝からつくるため、「街パン」の販売時間には間に合いません。焼きあがりは午後を過ぎるのです。

パンを焼く数やメニューの内訳はどのように決まるのでしょうか?

「まず、その日の朝に入る予約注文分ですね。」

「それから冷蔵庫を見て、今週の予定を確認しながら使える食材が決まり、よし、今日はこうしよう! という感じです。」

残ったパン生地も焼いて。
「自分たちで粉を配合しているので、毎日必ず今日の生地を焼いて食べて、みんなで確認しています。」

近所にお勤めのみなさんが、朝9時半くらいまでに、取りまとめた注文用紙を持ってきてくださるのだそうです。

いくつから注文を受けますか? の質問に、
「そうですねぇ……、いくつでも?」と笑顔の皆さん。

注文数が多いとお断りすることもありますが、問題はオーダーされる時間なのだそうです。

「こうしたところなので、ご予約の個数に対応できないときもあります。お客さまがご理解くださるので、本当にありがたいです。」(つるの里施設長・藤井さん)

お客さまが描いてくださったパンの絵。ファンからのすてきな声援です。
「もう、みんなうれしくて!」(パン工房長・武田さん)

小さなところ、と聞いておじゃました工房。

たしかに大きくありませんが、明るく伸び伸びとした、とてもすてきな場所です。

仕事をするみなさんの朗らかさ、作業台とオーブンの、そして人との距離が、心地よく感じられるスペースです。

だれかの話し声に、みんなが答える距離。

顔を上げれば、パンに向かうチームの様子が目に映り、笑顔が返ってくる場所です。

エピローグ

ところで、「つるの里」のお名前は鶴見の地名からですか? とうかがうと、

「それもありますが、前理事長の名前に“鶴”の文字がありまして、合わせて『つるの里』となりました。」(所長・藤井さん)

人と土地のご縁を感じます。


「施設を移転するときに、前理事長から”明るくすてきなところが良い”という希望がありました。」(所長・藤井さん)

明るくすてきなところが良い。訪れた人が玄関の扉を開けたとき、

“わぁ! すてき! またここに来たい! ”と思うような場所です。

それなら利用者さまも、きっと毎日たのしく過ごすことができるでしょう。

理事・平出田鶴子さん


そして、迎えるみなさんの穏やかな笑顔は、そのすてきな場所を明るく照らしています。

つるの里

住所 〒230-0078 横浜市鶴見区岸谷1-16-27
電話 045-633-4836
営業時間 9:00ー16:00
定休日 土・日・祝日(イベント等により変更あり)

「社会福祉法人あさひ」による運営。パンやクッキーの製造と販売を行っています。
“パン工房”は下記の場所にあります。
住所 鶴見区東寺尾北台4-10
電話 045-572-7565
注文を承っております。お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

N

日頃、ひとりは建築設計を仕事にしていて、もうひとりはアートワークをしています。ややこしいので、ColabusウェブサイトではまとめてNです。頭文字みたいで推理小説風なところがお気に入り。Nを水平方向に反転するとキリル文字のИ(発音は /i/ )、意味は[そして]。私たちは皆さんとColabusをつなぐ、ささやかな接続詞になれることを願っています。