キウイフルーツの木の下で
横浜市営地下鉄「センター南」駅から東へ歩いて15分ほどの場所に、都筑ハーベストの建物があります。
周りには果樹園や畑が広がり、のんびりした場所です。
そこから車で10分ほどの丘の上に、1000坪をこえる広さの農園があります。
農の実践を通して就労継続支援に取り組む、都筑ハーベストの活動をご紹介します。
小林さんとの出会い
都筑ハーベストの小林さんとの出会いは、横浜市・市庁舎で開催された「ノウフクマルシェ」でした。
農薬を使わず、有機肥料のみで育てる野菜づくりに取り組み、商品のことを丁寧に説明する都筑ハーベストのみなさんの姿が印象に残ります。
サツマイモを手に取ると、「とても甘いですが、今年はどういうわけか少しスジがあります。」と説明を受け、帰宅して蒸してみたところ、お話しそのままにとても甘く、わずかにスジが入るサツマイモでした。
裏ごしをしてお菓子にすると、格別な美味しさです。
ルッコラや小松菜、ほうれん草も、しっかりと濃く、その野菜らしいクセのある食味が口の中に広がります。
都筑ハーベストのみなさんが取り組む農について知りたくなり、いつでもお越しください、の言葉に甘え農園におじゃますることにしました。
農園は都筑区、池辺市民の森に隣接する農地の一角にあります。
丘の上のちょうどてっぺんから東南に広がる傾斜で、雑木林が広がります。
空は広く、地に立つすべてのものが影を土に預け、ときおり畑の上を風が渡り…。
わたしたち人も風景の一部であることを、あらためて思い出します。
午前9時を過ぎると、丘の上の道から、一人、二人、とスロープを下りて畑の土を踏みます。
以前は施設に集合し車で畑に向かいましたが、感染症拡大防止の取り組みがはじまってからは、個別に足を運ぶことになりました。
畑を見渡す場所に、キウイフルーツの木でつくられた棚があり、みなさんが集まるとその木陰でミーティングがはじまります。
午前10時、利用者の皆さんとスタッフのミーティングがおわり、作業をはじめます。
地形の利用
緩やかに南に下る斜面地の畑は、いくつもの変形した区画にわかれ、みな表情が異なります。
寒冷紗で覆われたトンネルの中にはルッコラや小松菜、黒いマルチの列は秋ジャガ。
ふかふかに耕された土からのぞく、ちょっと不器用な列の小麦の芽吹き。
すっかり葉の落ちた低木のブルーベリー。
踏みならされた作業用の通路に、隣の畑との境界を示す常緑の低木。
ざっと12〜13種類の作物がそれぞれの場所に植え付けされています。
畑の畝はおもしろいように、みなそれぞれの方向です。
「ここは斜面地なので、水はけも場所によって少しずつ異なります。水の流れやすい場所は土壌の流出防止も兼ねて、勾配に垂直に畝を作っています。植え付けの場所選びも、水が必要な里芋はここに、といった具合で、地形から自然と決まることもあります。土壌の流出防止には雑草も一役かっています。」
雑草は抜かずにそのままですか、とたずねると、
「冬の雑草は野菜に対しあまり悪さをしないので積極的に草むしりをしていませんが、夏の雑草はそうはいきません。草むしりは本当に大変な作業です。作業する人のこと、日射のこと、野菜のことを考え、農家さんほど早くはないですが、夏場は早めにはじまり午前中に終えます。」