つるの里

寄り添い、たずさわり、一緒に

—– 「街パン」会場でお聞きしたところ、一日に焼くパンの数が限られているそうですね。

所長・藤井優子さん:

工房で焼くパンは一日に多い日で100個くらいでしょうか。
工房、と呼んでいますが狭い場所で、本当に小さなオーブンで焼いています。
職員3名と利用者さま2名のローテーションで、朝9時から作業します。

こちらの施設から離れた場所にあるので、後ほどご案内しますね。
工房は、皆でたのしくわいわいとパンをつくっている、にぎやかなところです。

パン工房の皆さんと植松さん(中央)、生地を成形しています。
田中さんは、植松さんと交代でパン工房の担当です。今日はアイロンビーズ作業の日でした。
写真のために快くマスクを外す田中さん。横から語りかける、やさしい藤井さんの手も一緒に。
田中さんの繊細なこの手が、人気メニューの“おいもカスター”をつくっています。
「アーモンドの飾り付けが難しいです。」(田中さん)

—– 「街パン」では30分ほどで売れてしまうパンです。販売個数を増やせば収益が上がるのでは、と考えてしまいますが、そうした予定がないそうですね。

所長・藤井優子さん:

私たちは、利用者さまに寄り添い、たずさわり、一緒にやっていこう、利用者さまができること、やりたいことを優先し支援していこうと考えています。

冷凍のパン生地を使えば個数は増やせますが、それよりも粉をさわるところから……、
自分たちで配合して捏ねることからさせてあげたいのです。

お昼にはグループホームの昼食もあり、外部販売の日にはつくる量が多いので、工房はすこし大変です。

朝9時からつくりはじめますので、やはりできることに限度があります。
こうしたことから、なかなか余裕のある数にはならないのですね。

—– 工房でもパンを販売しているとうかがいましたが、数はどのくらいでしょうか?

所長・藤井優子さん:

そうですね、パン工房の前で10個前後でしょうか…。

—– 10個ですか!?

所長・藤井優子さん:

少ないですよね。
店舗ではないので、外から声をかけていただいて販売している感じです。
近所の方々が買いに来てくださっています。
そのほかに予約販売もありますが、日によって数が異なります。

工房での販売は、感染症拡大防止の自粛解除後にはじめた取り組みです。

このすてきなパンの絵、先ほどどこかで見ましたが……。「利用者さまの作品ですね。」(所長・藤井さん)
そうでした、施設に飾ってありましたね。

—– なぜ、自粛解除後にはじめたのでしょうか。

所長・藤井優子さん:

販売先だった高齢者施設に行かれなくなり、パンの販路が狭くなりました。
今まで取り組んでこなかった、地域の方々への販売を考えました。

工房と、これからのことを話し合い、まずメニューを絞ることにしました。
新しく季節ごとのメニューと、それから売れ行きの良いものを通年商品にしました。

季節のパン4種類、そして通年商品20種類のメニュー表です。
焼いたパンを冷ましてしているときも、このように外から見える工夫をしています。冷めてから袋へ。

—– つるの里では、パンづくりのほかに、どのような取り組みがありますか。

主任・関口典子さん:

座って作業できるものとして、さをり織りやアイロンビーズですね。
そのほかに外部から依頼されているシュレッダー作業などもあります。
同じ作業をしていますと、どうしても飽きてきますので、タイミングを見て支援員が次々に提案し、ローテションで作業を変えていきます。

先ほどもお話にありましたが、わたしたちは利用者さまに寄り添い、一緒にやっていくことを考えます。
いつも、なにか新しくできることがないか、みなさんがやってみたくなることはないか、さがしています。

所長・藤井優子さん:

こうした作業とは別に、畑作業があります。
施設全員の取り組みとして、わたしたちの昼食などで自家消費する野菜を育てています。
土をさわり、自然に触れさせてあげたいというと思いからはじまりました。

—– 自分の手で収穫した野菜が、食卓に上がるのはうれしいですね。

所長・藤井優子さん:

そうですね。
自分たちで育てたものを食べるよろこびがあります。
収穫することによろこびを感じる人もいれば、力仕事に達成感を得る人もいます。
こうした取り組みは、それぞれの人の感じ方を知ることができます。

この記事を書いた人

N

日頃、ひとりは建築設計を仕事にしていて、もうひとりはアートワークをしています。ややこしいので、ColabusウェブサイトではまとめてNです。頭文字みたいで推理小説風なところがお気に入り。Nを水平方向に反転するとキリル文字のИ(発音は /i/ )、意味は[そして]。私たちは皆さんとColabusをつなぐ、ささやかな接続詞になれることを願っています。