ハマを愛する・ハマで暮らす
はまじん

テキスタイルのある暮らし

  

テキスタイルデザイナー ゆかり woo Muhireさん 
今回は横浜を飛び出し、大磯の「浜」から

  

フィンランドに留学したり、単身ルワンダに赴いたりと、アグレッシブなゆかりさんは、一方で、とても謙虚で、素直な方です。 「自分は何も知らない」と真摯におっしゃいます。 そして「当事者でなくても想像力を働かせて、いろんな人たちの不都合に気付けるようになりたいですね」というゆかりさんの言葉に、ハッとさせられました。 様々な問題が溢れるこの社会。 少しでも他の人の痛みに気付けるように、そして、痛みに寄り添えるように、ありたいと思います。フィンランドで、そしてルワンダでの体験、とても興味深いです。 ぜひ、ご覧くださいね。

  

テキスタイルデザインを仕事にしようと思ったきっかけは何ですが?

  

もともと高校で美術を学び、その後美術系の専門学校に行ったのですが、もっと専門的に技術や知識が学びたいと、女子美術大学に入学しました。そこで「暮らしに使えるものを創りたい」と、テキスタイルを選びました。陶芸も考えたのですが、やっている人が多くて、ライバルが多くなるかな(笑)と。その後、大学の交換留学プログラムで、フィンランドに二度短期留学し、そこでもテキスタイルを学びました。

  

フィンランドでの暮らしはいかがでしたか?

  

フィンランドでは大学に様々な年齢の人がいたので、アイデアも様々でした。日本の大学に入ったとき、20歳の私の周りはほとんど年下だったので、ずいぶん違うなあと思いました。一度仕事に就いた人が、もう一回学びたいと大学に戻る、そういうハードルが高くないところが羨ましいなと思います。高校を出てすぐにやりたい事がわかっていて、専門的な事を学んで、それで行くしかないっていうよりは、やっぱり違う事をしたいなと思った時に、戻れる社会って羨ましいなって。フィンランドでは、ベビーカーを押している人は、バスや電車に無料で乗れるんです。バスの後ろからベビーカーと一緒に乗って、目的地に着いたらそのまま後ろから降りる。
日本の場合、お金を払ったり、そのために移動したりと、子育てをしている人にとって、その一手間がとても負担なのではと思います。おそらくそれは、車椅子でもそうなんじゃないでしょうか。そんな小さな一つ一つの違いが、暮らしやすさや生きやすさに繋がっていくのだと思います。大学での勉強だけでなく、そんなフィンランドの社会を知ることが出来て、とても面白かったです。

  

その後ルワンダのフェアトレードの会社でインターンをなさいますが、どのような経緯でルワンダに行かれることになったのですか?

  

母の仕事(ギャラリー経営・輸入品販売)の都合で、子どものころから海外に行く機会が多かったのですが、高校生くらいの時フランスで初めてアフリカ系の人達に出会って、ちょうどその頃からワールドミュージックにも興味を持ち、アフリカの音楽や布がすごく好きになって、、、、いつかは行ってみたいなあとぼんやり思っていました。フィンランドから帰ってインターネットで「海外で活躍する日本人」を紹介するサイトを見ていたら、たまたまルワンダで籠を作るフェアトレードの会社がインターンを募集していて、すぐメールしました。

  

ルワンダはどうでしたか?

  

ルワンダの情報がなさすぎて、行くことが決まってから調べました。どんなところなんだろう?みんなどんな格好をしているんだろう?って、そこからなんですが(笑)。
でも行ってみたら、意外と普通でした(笑)。街があって、スーツを着ている人もいて、地球の反対側まで来たけど、思ったより普通だったなあって(笑)
ジェノサイド(*)のこともあったので、みんな傷を負っていたり、トラウマになっているのかなあと不安だったのですが、街は綺麗で、みんな明るく普通に生活していました。でも、仲良くなると、ジェノサイドのことを話してくれる人も何人かいました。物凄いことを経験してきたので、精神を病む人がいてもしょうがない世界だなと。思ったより普通ではありましたが、一番いつもと違う、知らない世界でした。いろいろ衝撃的な事も多くて、でも、それがいいっていうか、好きですね。日本から遠すぎて寂しくなることもありましたが、人々はフレンドリーで、外国人の私に興味を持って接してくれ、様々な人と知り合いになりました。

(*)1994年にルワンダで発生した大量虐殺。1994年4月6日に発生した、ルワンダのジュベナール・ハビャリマナ大統領と隣国ブルンジのシプリアン・ンタリャミラ大統領の暗殺から、ルワンダ愛国戦線 (RPF) が同国を制圧するまでの約100日間に、フツ系の政府とそれに同調するフツ過激派によって、多数のツチとフツ穏健派が殺害された。正確な犠牲者数は明らかとなっていないが、およそ50万人から100万人の間、すなわちルワンダ全国民の10%から20%の間と推測されている。(Wikipediaより)

  

住んでみてわかったことがたくさんありますね。

  

そうですね。私はいろんなことを知らなかったなあと。でも、今でもそれほど知っているとは思ってないです。例えば、日本で子どもを保育園に入れようと思った時に、待機児童の問題を知りました、こういう事って当事者になって初めてわかることだなあと。今後は当事者にならなくても、想像力を働かせていろんな人たちの不都合に気付けるようになりたいですね。

  

テキスタイルをデザインするとき、何かインスピレーションのようなものはありますか?

  

デザインする時モチーフなどは起きませんが、布の上にこんな流れや模様があったら良いなと頭の中で考えてから描きます。幾何模様や植物を連想させる単純な形の模様が多いのは、日常で目にする景色などから影響を受けているからだと思います。自然だけでなく意外と家の中で身近なものを見ていても、こういう連続模様にしたら面白いなーなど考えることはよくあります。最近は行きにくいですが、旅をして目にするものもデザインに影響を与えていると思います。

  

テキスタイル作品を使う際のアドバイスなどはありますか?

  

購入なさった方が、それぞれの感性でお好きなように使っていただければいいと思います。作り手が見えるもの(作家もの)が日常にあるというのは、ちょっと楽しいし、たくさんの安い量産品に囲まれているより、物を大切にしてくださるのかなと思います。

  

最後に、大磯での暮らしはいかがですか?

  

大磯の暮らしは気に入っています。人通りも多くなく自然がありゆったりしているので、子どもと散歩できる場所もたくさんあります。引っ越してきたばかりの頃は、あんまり静かな環境なので寂しくなった時もありましたが、慣れました。(子どもの頃も東京の下町に住んでいましたし、こんな静かな町に住むのは初めてでした。)今の家は特に山と川が近いので、窓の外の景色や、毎日鳥の声が聞こえて、気に入っています。

プロフィール

東京都生まれ、神奈川県大磯町在住
女子美術大学入学後、交換留学プログラムで、フィンランドに2度の短期留学。
卒業後、ルワンダにあるフェアトレードの籠製作会社にてインターンを経験。
約10ヶ月のルワンダ生活を終え、帰国後、作家活動を始める。
さらにインドに赴き、ブロックプリントの工房と繋がる。
作品をブロックプリント、シルクスクリーン、手描き、デジタルプリントなど、様々な工法で製作。
そのデザインを洋服、陶芸作品、雑貨小物などにして、個展や店舗、インターネットなどで販売。
ルワンダ人の夫と息子の3人暮らし。